- ライバーの教科書 -
- ライバーの教科書 -
2025.8.26
知識・ノウハウ月収20万円を超えたライバーのあなたへ。結論から言います。個人事業主になることを強く推奨します。
「手続きが難しそう…」「税金のことがよくわからない…」そんな不安を感じているかもしれません。ですが、安心してください。手続きはあなたが思っているよりずっと簡単で、税金面でのメリットは計り知れません。
私、元トップライバーで現在はライバー事務所「Traum(トラウム)」を経営する島袋が、自身の1億円プレイヤーとしての経験と、多くのライバーを成功に導いてきた知見を基に、あなたが損をしないための知識と具体的な手順をゼロから解説します。この記事を読み終える頃には、あなたの不安は自信に変わっているはずです。
この記事を読めば、以下の3点が明確になります。
まず、なぜ私がここまで「個人事業主」になることを勧めるのか、その大前提からお話しします。ライバーとして活動し、収入を得るということは、立派な「事業」です。その事業をどう扱うかで、あなたの手元に残るお金、そして社会的な信用が大きく変わってくるからです。
あなたがライバー活動で得た収入は、税法上、「事業所得」または「雑所得」のどちらかに分類されます。
個人事業主として開業届を出す、ということは、あなたの活動を「事業」として公的に宣言することに他なりません。これにより、後述する「青色申告」という強力な節税制度を利用できるようになるのです。
「個人事業主」という言葉に、難しく考える必要はありません。シンプルに言えば、「私、この名前(屋号)で、フリーランスとしてビジネスを始めます」と税務署に届け出ることです。
よく「法人化」と混同する人がいますが、全くの別物です。スタートアップ段階のライバーが、いきなり法人化を考える必要はほとんどありません。まずは個人事業主としてスタートし、年間の所得が800万円〜1,000万円を安定して超えるようになってから法人化(法人成り)を検討するのが王道です。
個人事業主と法人の違い比較表
比較項目 | 個人事業主 | 法人(株式会社など) |
手軽さ | 開業届を出すだけ(無料) | 定款認証や登記が必要(費用20万円〜) |
税金 | 所得税(累進課税 5%〜45%) | 法人税(所得800万円以下は15%など) |
社会的信用 | 法人よりは低い | 高い |
経費の範囲 | 比較的シンプル | 役員報酬や退職金など、より広い |
赤字の繰越 | 3年間 | 10年間 |
【トラウム代表・島袋からの本気のメッセージ】
私が多くのライバーと面談してきて、伸びる人と伸び悩む人の差はどこにあるか?それは「覚悟」です。ライバーという活動を、単なる「お小遣い稼ぎ」と捉えるか、「人生を懸けた仕事」と捉えるか。
個人事業主になるということは、後者の覚悟を形にする最初のステップです。「私はプロとして、この仕事で生きていく」という社会への宣言であり、自分自身への約束でもあります。
実際、屋号付きの銀行口座を持てたり、クレジットカードや賃貸の審査で有利になったりと、社会的な信用度が格段に上がります。ライバーを「職業」として胸を張って言えるようになる、そのための重要な第一歩なのです。
「覚悟の話はわかったけど、具体的に私にとって得なの?」当然の疑問です。ここでは、あなたが個人事業主になるべきか判断するための材料として、メリットとデメリットを徹底的に比較解説します。
個人事業主になり、青色申告をすることで得られるメリットは絶大です。特に重要な7つを挙げます。
もちろん、メリットばかりではありません。事前に知っておくべきデメリットも正直にお伝えします。
収入別・扶養内と個人事業主の年間手取り比較(青色申告65万円控除あり)
年間収入 | 扶養内の場合(税・社保負担軽) | 個人事業主(青色65万控除) | 差額(個人事業主有利分) |
300万円 | 約2,700,000円 | 約2,800,000円 | +100,000円 |
400万円 | 約3,500,000円 | 約3,640,000円 | +140,000円 |
500万円 | 約4,300,000円 | 約4,480,000円 | +180,000円 |
※数値は概算例、住民税・所得税・社保料を含む。
私がこれまで見てきた何百人というライバーの事例から断言します。毎月の収入がコンスタントにです。このラインを超えると、確定申告の手間や社会保険料の負担といったデメリットを、青色申告による節税メリットが圧倒的に上回ります。
年間所得300万円の場合、青色申告65万円控除だけで、白色申告に比べて所得税・住民税合わせて年間10万円以上も手元に残るお金が増える計算です。このお金で、新しい配信機材を買ったり、自分に投資したりできる。この差は、年々大きくなっていきます。悩む時間がもったいない。これが私の結論です。
「よし、私も個人事業主になろう!」と決意したあなたへ。ここからは、具体的な手続きの方法を、誰でもできるように3つのステップで解説します。この通りにやれば、1時間もかからずに終わりますよ。
まずは「個人事業の開業・廃業等届出書」(通称:開業届)を準備します。この書類は、国税庁のウェブサイトからPDFでダウンロードできますし、税務署の窓口でもらえます。
【出典】
[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
書き方は非常に簡単です。以下のポイントを押さえて、見本画像を参考に記入してみてください。
事業の概要: あなたの仕事内容を具体的に書きます。「ライブ配信アプリを利用したコンテンツ配信、及びそれに付随するファンマーケティング活動」といった形でOKです。
ここが最も重要なポイントです。開業届を出すなら、「所得税の青色申告承認申請書」も必ずセットで提出してください。これを出し忘れると、その年は自動的に白色申告となり、65万円控除などの大きな節税メリットを受けられなくなってしまいます。
この申請書も、国税庁のサイトからダウンロードできます。開業届と同時に提出すれば、手続きは一度で済みます。
書類が2つ準備できたら、管轄の税務署に提出します。提出方法は以下の3つです。
これで、あなたも今日から一国一城の主、個人事業主です!
個人事業主になったら避けて通れないのが「確定申告」です。これは、1年間の所得と、それに対する税額を計算して国に報告・納税する手続きのこと。あなたの最大の不安は、この確定申告にあるかもしれません。でも、大丈夫。仕組みを理解すれば、決して怖いものではありません。
まず、確定申告が必要になる条件です。
確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類がありますが、これは議論の余地なく「青色申告」一択です。先ほど提出した「青色申告承認申請書」は、この青色申告をするための許可証のようなものです。
青色申告(65万/55万/10万控除)と白色申告の比較表
比較項目 | 青色申告(65万円控除) | 白色申告 | 差 |
特別控除額 | 65万円 | 0円 | 圧倒的な節税効果 |
赤字の繰越 | 3年間可能 | 不可 | リスクヘッジに優れる |
家族への給与 | 全額経費にできる | 専従者控除(上限あり) | 節税の幅が広い |
記帳方法 | 複式簿記 | 単式簿記(簡易) | 手間はかかるがソフトで解決 |
事前届出 | 必要 | 不要 | 開業時に出すだけ |
見ての通り、メリットの大きさが全く違います。
最大のメリットである65万円控除を受けるためには、以下の3つの条件をクリアする必要があります。
「複式簿記」と聞いてアレルギー反応を起こす必要はありません。今の時代、会計ソフトを使えば、日々の売上や経費を入力するだけで、自動的に複式簿記の帳簿を作成してくれます。
【私が育てたライバーの、本当の話をします】
以前、私が育成したライバーで、月収50万円以上を稼ぐ人気者になった子がいました。しかし、彼は「よくわからないから」という理由で、確定申告をずっと放置していたのです。
ある日、彼の元に税務署から1通の封筒が届きました。「お尋ね」という、事実上の税務調査の通知です。結果、過去数年分の申告漏れを指摘され、本来納めるべき税金に加えて、無申告加算税や延滞税といった重いペナルティが課せられました。彼が最終的に支払った金額は、数百万円にも上りました。
これは、誰にでも起こりうることです。知識がないことは、罪であり、大きなリスクなのです。日々の記帳をしっかり行い、正しく申告すること。それが、あなたの活動と生活を守る最大の防御になります。
会計ソフトを導入すれば、確定申告のプロセスは驚くほどシンプルになります。
おすすめ会計ソフト公式サイト
さて、ここからはこの記事の最も独自性の高いパートです。確定申告で節税する上で最も重要な「経費」について。特に、ライバーという職業特有の経費を、私の経験を基に「どこまでがOKで、どこからがNGか」を具体的に解説していきます。
経費を判断する上での大原則は、たった一つです。それは「その支出が、あなたのライバーとしての事業(売上)に、直接的または間接的に関連しているか」ということです。そして、それを税務署の調査官に客観的に説明できるかが全てです。
以下に挙げるものは、ライバーなら経費として認められる可能性が高いものです。
配信に必須のインターネット回線費やスマホの通信費は経費です。ただし、プライベートでも使用している場合は、事業で使う割合(例えば50%など)を合理的に計算して、その分だけを経費にする「家事按分」という考え方が必要です。
配信用のPC、スマホ、マイク、リングライト、スマホスタンドなど、10万円未満の機材は購入した年に全額経費にできます。10万円以上のものは「減価償却資産」として、数年に分けて経費化します。
配信のネタ探しやトークスキル向上のために購入した書籍、他のライバーの有料コンテンツ、自己投資のためのセミナー参加費なども経費になります。
【事務所代表としての補足|島袋 諒平】
この項目は、ライバーから最も質問が多く、税務署と解釈が分かれやすいグレーゾーンです。ここで私の明確な線引きをお伝えします。
経費として認められる可能性が高いもの:
経費として認められない可能性が高いもの:
ポイントは「配信という仕事のためだけに、特別に発生した費用か」です。普段の自分を綺麗にするための費用は、残念ながら経費にはなりません。この線引きをしっかり意識してください。
事務所の担当者や、コラボ配信する他のライバーとの打ち合わせでかかった飲食代は経費です。ただし、応援してくれるファンとの食事代は経費にはなりません。これは明確に覚えておいてください。
事務所での打ち合わせ、リアルイベントへの出演、配信ネタのための取材などでかかった電車代や宿泊費は経費になります。
アプリ内で投げ銭を換金する際の手数料や、銀行の振込手数料も、れっきとした経費です。
自分の知名度を上げるために出稿したSNS広告の費用や、ファンに配るためのオリジナルグッズ(ステッカーなど)の制作費も経費計上できます。
【私がトップライバーだった頃の話をします】
私自身、経費については徹底的に管理していました。なぜなら、経費を制する者が手残りを最大化できるからです。
衣装代については、「この衣装は〇月〇日の配信企画『△△』で使用」とメモを残した領収書を保管。交際費も「ライバー〇〇さんとコラボ打ち合わせ」と必ず記録していました。領収書の管理は、専用のボックスに入れるのが基本ですが、今は会計ソフトのスマホアプリでレシートを撮影するだけでOK。これが本当に便利で、撮った瞬間に経費として記録され、画像も証拠として残ります。紙で保管する手間が省け、紛失のリスクもありません。今から始めるあなたは、絶対にこの方法をお勧めします。
最後に、これまでの説明でカバーしきれなかった、細かいけれど重要な疑問について、Q&A形式でお答えします。
A.はい、必要です。
あなたが事務所と結んでいる契約が「雇用契約」ではなく「業務委託契約」であれば、あなたは会社の従業員ではなく、対等な立場のパートナー(=個人事業主)です。ほとんどのライバー事務所はこの形式です。
事務所はあなたのマネジメントはしてくれますが、あなたの税金手続きを代行してくれるわけではありません。確定申告は、あくまであなた自身の責任で行う必要があります。
【事務所代表としての補足|島袋 諒平】
ちなみに、本当にライバーのことを考えている事務所は、所属ライバー向けに税理士を招いた勉強会を開くなど、税金に関するサポート体制を整えているものです。事務所選びの際に「税金周りのサポートはありますか?」と質問してみるのは、その事務所のスタンスを見極める良いリトマス試験紙になりますよ。
A.住民税の徴収方法を「普通徴収」にすれば、バレるリスクは大幅に下げられます。
会社に副業がバレる一番の原因は、住民税の金額です。確定申告の際に、住民税の納付方法を選択する欄で「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れましょう。こうすることで、ライバー所得分の住民税の通知が、会社ではなくあなたの自宅に直接届くようになり、会社に所得が増えたことを知られずに済みます。
A. 年間の所得(売上ー経費)がそれまでは、先ほど紹介した会計ソフトを使えば、十分に一人で対応可能です。税理士にお願いするメリットは、節税に関する専門的なアドバイスをもらえることや、面倒な作業を全て丸投げできることですが、当然コスト(年間10万円〜)がかかります。まずは自分でやってみて、事業が拡大し、手に負えなくなってきたと感じたら相談してみる、というスタンスで良いでしょう。
A.はい、ほぼ必須と考えてください。
特に、青色申告65万円控除の条件である「e-Tax(電子申告)」を利用する際には、マイナンバーカードによる本人認証が必要です。まだ持っていない場合は、この機会に申請しておくことを強くお勧めします。申請から受け取りまで1ヶ月以上かかることもあるので、早めに行動しましょう。
ここまで長い時間、お疲れ様でした。個人事業主になるための知識、手続き、そして税金の話。頭がパンクしそうになったかもしれません。
しかし、個人事業主になることは、単なる節税対策ではありません。それは、あなたがライバーという仕事を胸を張り、プロフェッショナルとしての覚悟を決め、自立するための重要な儀式なのです。
今回お伝えした知識は、あなたを不要な税金のトラブルから守り、ライバルに差をつけ、活動に専念させてくれる強力な武器になります。
【トラウム代表・島袋からの最後のメッセージ】
私も最初は、右も左もわからないただの配信者でした。しかし、ファンを大切にし、自分と向き合い、そして今回お話ししたような事業主としての知識を一つ一つ身につけることで、自信を持って活動の幅を広げることができました。
この記事をここまで読み進めてくれた、勉強熱心なあなたなら、もう大丈夫。不安がる必要は何もありません。
自信を持って、プロライバーとしての第一歩を踏み出してください。私が、そしてTraumが、あなたのその挑戦を全力で応援しています!
【要点チェックリスト】今日からあなたがやるべきこと
さあ、最後の仕上げです。今日からあなたが具体的に何をすべきか、チェックリストにまとめました。一つずつ、行動に移していきましょう。
項目 | 備考 |
自分の月収が安定して20万円を超えているか確認する | 超えていれば、迷わず次のステップへ |
開業届と青色申告承認申請書を準備する | 国税庁サイトからDL、この記事の記入例を参考 |
最寄りの税務署に提出する(控えを必ずもらうこと) | |
クラウド会計ソフトを導入し、日々の売上と経費を記録し始める | まずは無料お試しプランからでもOK |
経費の領収書・レシートを専用の箱やファイルに保管する | スマホアプリでのスキャンが断然おすすめ |
行動喚起1: まずは会計ソフトの無料プランに登録してみる
どんなものか、まずは触ってみるのが一番です。
行動喚起2: あなたの地域の税務署の場所を確認しておく
提出先の場所を事前に把握しておきましょう。