- ライバーの教科書 -
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2025.10.30
知識・ノウハウ
結論: TikTokの運営会社は、中国発のテクノロジー企業「ByteDance(バイトダンス)」です。本記事では、Webマーケティング担当者であるあなたがクライアントに「TikTokは信頼できる媒体か?」と問われた際に、自信を持って回答できるよう、運営会社の実態から、2025年に入り激動した米国での規制動向、事業リスク、そして将来性までを、プラットフォームの最前線で活動する私、島袋が独自の視点も交えて網羅的に解説します。
この記事を最後まで読めば、あなたは以下の3つを手に入れることができます。
クライアントへの提案や社内でのディスカッションの場で、「で、結局TikTokってどこの会社が運営しているの?」という質問は、必ずと言っていいほど出てくる最初の関門です。まずはこの最も重要な基本情報を、正確かつ簡潔に押さえていきましょう。
TikTokを運営しているのは、2012年3月に張一鳴(ジャン・イーミン)氏によって設立されたテクノロジー企業、ByteDance(バイトダンス)社です。
単なるアプリ開発会社ではなく、AI(人工知能)技術、特に機械学習を用いたアルゴリズムを核としたコンテンツプラットフォームを世界中で展開する巨大企業であり、非上場企業としては世界で最も企業価値の高い「ユニコーン企業」の一角として知られています。
項目 | 内容 |
企業名 | ByteDance Ltd. (字节跳动) |
設立年 | 2012年3月 |
創業者 | 張一鳴 (Zhang Yiming) |
登記上の本社 | ケイマン諸島 |
実質的な本社機能 | 中華人民共和国 北京市 |
法的な登記上の本社はタックスヘイブンであるケイマン諸島に置かれていますが、実質的な事業本拠地は創業の地である中国・北京にあります。これはグローバルな資本調達などを目的とした、多くのテクノロジー企業が採用する手法です。
ByteDance社の強みは、1つのアプリの成功に依存しているわけではない点にあります。彼らはAI技術を応用し、様々な領域でユーザーを惹きつけるプロダクトを次々と生み出してきました。
ByteDanceの主要サービス・アプリ一覧
TikTokは、ByteDance社が開発したプロダクトの1つです。その関係性を理解する上で、2つの重要なポイントがあります。
もともと中国国内で絶大な人気を誇っていたショート動画アプリ「Douyin(抖音)」が、ByteDanceの最初の大きな成功でした。その成功モデルと強力なアルゴリズムを基盤に、グローバル市場向けに開発されたのがTikTokです。
後述する安全性への懸念に対応するため、ByteDance社は「TikTokのユーザーデータは中国政府から独立して管理されている」と繰り返し公言しています。具体的には、米国ユーザーのデータは米国内のサーバーに、その他の地域のユーザーデータはシンガポールなどのサーバーに保管していると説明しています。
日本国内でTikTokに関連する事業、特に広告事業やクリエイターサポートを行っているのは、ByteDance社の日本法人である「ByteDance株式会社」です。
項目 | 内容 |
法人名 | ByteDance株式会社 |
所在地 | 東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ |
設立日 | 2016年8月 |
2016年8月に設立され、翌月には動画アプリ「BuzzVideo」の日本展開を開始するなど、ByteDance社が早期から日本市場を重視していたことがうかがえます。
日本法人の主な役割は、日本市場に特化したビジネス展開です。具体的には、TikTok For Businessを通じた広告プロダクトの販売、広告主へのコンサルティング、そして私のようなクリエイターやライバー事務所との連携、イベントの開催などを担っています。
「運営はByteDance社」と理解した上で、なぜこれほどまでに運営会社の情報が注目され、時には国際ニュースを騒がせるのでしょうか。その背景には、他のSNSプラットフォームにはない、ByteDance社特有の事情があります。ここでは、あなたがクライアントの懸念を先回りして解消するために知っておくべき3つのポイントを解説します。
ByteDance社は中国発の企業ですが、そのビジネスは完全にグローバルです。単にアプリを各国で配信しているだけでなく、事業運営の拠点も世界中に分散させています。この複雑な組織構造が、外部から見ると「運営会社が分かりにくい」と感じる一因かもしれません。
これが、ByteDance社を語る上で避けては通れない最も重要な論点です。
懸念の根底にあるのは、2017年に施行された中国の「国家情報法」です。この法律は、中国政府が国家の安全を理由に、国内のいかなる組織や個人に対しても情報提供を要請できると定めています。
このため、「ByteDance社が中国政府からTikTokユーザーの個人データを提供するよう要請された場合、それを拒否できないのではないか?」という懸念が、特に西側諸国で強く持たれているのです。
これは客観的な法律上のリスクに基づくものであり、TikTokの安全性に関する議論の核心です。
米国におけるTikTok規制をめぐる状況は、2025年に入り劇的に動きました。この一連の流れは、今後のプラットフォームの行方を占う上で極めて重要です。
現状(2025年10月時点)、法律自体は依然として有効なまま、適用期限が延長されている状態で、米国政府とByteDance社との交渉が続いています。 このように、TikTokは米国で一度サービス停止に追い込まれながらも、政治的な判断によって再開するという、極めて不安定かつ予断を許さない状況下にあります。
米国での動きとは別に、世界各国で政府機関や公務員が使用する「公用端末」でのTikTok利用を禁止する動きが広がっています。
これらは、あくまで機密情報漏洩を防ぐための予防的措置であり、一般ユーザーの利用を直接禁止するものではありません。しかし、政府レベルでリスクが認識されていることの表れと言えるでしょう。
【トラウム代表・島袋からの本気のメッセージ】

マーケティング担当者のあなたにこそ、この視点を強く持ってもらいたいのですが、ByteDance社の本質は、強力無比なAIアルゴリズムにあります。
この「ブラックボックス」とも言えるアルゴリズムこそがByteDanceの企業価値の源泉であり、同時に、世論形成に影響を与える可能性を懸念する各国政府が注視する核心部分でもあるのです。この両面性を理解することが、TikTokというプラットフォームを深く理解する鍵となります。
さて、ここからが本題です。これらの背景情報を踏まえた上で、マーケティング担当者であるあなたが最も知りたいであろう「広告媒体として、TikTokおよびByteDance社を信頼して良いのか?」という問いにお答えします。
結論から言えば、「ビジネス活用のメリットは依然として大きいが、リスクの存在を直視する必要がある」というのが私の見解です。
ByteDance社は、疑惑の目に対抗するため、積極的に外部のセキュリティ専門機関による監査を受け入れています。欧州では「Project Clover」、米国では「Project Texas」 と名付けたプロジェクトで、巨額の資金を投じて域内でのデータ管理やソースコードの監査体制を構築しています。
日本の「個人情報保護法」は、世界的に見ても非常に厳しい基準を持つ法律の1つです。ByteDanceの日本法人はこの法律を遵守する義務があり、日本の法律の枠組みの中では、適正な運用がなされていると考えられます。
ByteDance社はデータの分離管理を主張していますが、その主張とは裏腹に、過去に中国拠点の社員がユーザーデータに不適切にアクセスした事実が確認されています。
2022年末、ByteDance社の内部調査により、同社の社員が複数の米国人記者のIPアドレスなどのTikTokデータにアクセスし、社内情報の漏洩元を特定しようとしていたことが発覚しました。この事件では関与した社員は解雇され、経営陣も遺憾の意を表明しましたが、ユーザーデータが中国側から完全に遮断されているわけではないことを示す重大な事例となりました。
公式な対策は講じられているものの、こうしたリスクがゼロではないという事実は、クライアントに説明する上でも正直に伝えるべきです。
【事務所代表としての補足|島袋 諒平】

これだけのリスクを抱えながら、なぜByteDanceはTikTokに固執するのか。それは彼らが「クリエイターエコノミー」、つまり個人がその才能で経済的に自立できる新しい経済圏を本気で構築しようとしているからです。魅力的なクリエイターこそがユーザーを惹きつけ、プラットフォームを活性化させる最も重要な資産だと理解しているのです。
この「クリエイターエコノミー」という思想は、広告のあり方にも色濃く反映されています。企業が成功するためには、「広告枠を買う」という発想から、「プラットフォーム上のコミュニティに参加する」という発想へと転換することが、成功への最短ルートです。
【島袋の体験談:成功事例】

私が代表を務める事務所「Traum」で、ある伸び悩んでいたライバーが化粧品会社の企業案件を担当した時の話です。当初、企業側が用意したのは、商品の特徴を詳細に説明する、きれいに作り込まれた台本でした。
私はそれに「待った」をかけ、こう提案しました。「台本は捨てましょう。それよりも、いつものあなたのライブ配信のように、実際に商品を使いながら視聴者とリアルタイムでコミュニケーションを取る企画にしませんか」と。
結果、そのライブ配信は大成功。視聴者のリアルな質問にライバーが自身の言葉で答える姿が共感を呼び、エンゲージメント率(コメントや「いいね」の数)は、当初の想定の5倍以上に跳ね上がりました。これは、ByteDanceがプラットフォーム全体でユーザーに届けたい「リアルでオーセンティックな体験」という思想と、私たちの企画が完全に合致したからに他なりません。
A.はい、同じByteDance社です。
A.ビジネスに関する問い合わせは、「TikTok for Business」の公式サイト内にある問い合わせフォームから連絡するのが一般的です。
A.2025年現在、ByteDance社は非上場です。そのため、個人投資家が株式市場で同社の株を購入することはできません。特に米国との政治的な緊張が続く中、近い将来のIPOは困難な状況にあると見られています。

A.の質問に、専門家として誠実に答えます。
「100%安全なプラットフォームなど、この世に存在しない」というのが大前提です。その上で、TikTokに関しては「他のSNSにはない、中国の国家情報法に起因する潜在的リスクと、過去の不適切アクセスの前例がある」という事実を認識すべきです。
重要なのは、そのリスクを理解し、冷静に評価した上で、それを上回るビジネス上のリターン(メリット)があるかどうかを天秤にかけることです。私の結論は変わりません。現状の日本市場においては、TikTokを活用するメリットは、潜在的なリスクを上回っていると考えています。しかし、その判断は、扱う商材や企業のコンプライアンス基準によっても異なります。リスクをゼロと説明するのではなく、客観的な事実を全て開示した上で、活用を判断すべきです。
チェック項目 | 要点 |
運営会社の実態 | ✅ TikTokの運営は中国発のByteDance社。登記上の本社はケイマン諸島。日本法人は2016年設立。 |
安全性リスクの現状 | ✅ 国家情報法に加え、過去に不適切なデータアクセス事例あり。リスクはゼロではない。 |
最新の規制動向 | ✅ 米国では2025年に一時サービス停止後、大統領令で猶予中。予断を許さない状況が続く。 |
ビジネス活用のポイント | ✅ 運営の思想は「クリエイターエコノミー」。広告は「コミュニティへの参加」と捉えることが成功の鍵。 |
本記事で解説した最新かつ正確な情報を武器にすれば、あなたはもうクライアントの前でTikTokの運営会社について説明することに迷うことはないはずです。
自信を持って、TikTokというプラットフォームが持つ計り知れないポテンシャルと、向き合うべきリスクの両面を、誠実に提案してください。
そして、もしTikTokマーケティングのより具体的な戦略立案や、熱量の高いコミュニティを持つトップライバーを起用したプロモーションにご興味が湧きましたら、ぜひ一度、私が代表を務めるライバー事務所Traum(トラウム)にご相談ください。
机上の空論ではない、現場の最前線で培ったリアルな知見で、貴社のビジネスを成功に導くお手伝いができることをお約束します。